【脚本冒頭公開】影に咲く花と、陽に舞う涙
ある冬のことだ。
軍人である私は、 戦時中でありながらも、我が国が優勢であるがゆえ、久しぶりの長い休みを獲得することができた。
そこで私は、首都を離れ静養しようと思い立つ。
以前より訪れたいと思っていた 街がある。
そこは、戦火から一番遠いと されている、とある港町で穏やかな平和を感じられると聞いた。
休暇に入り、私はすぐにその街へ向かった。
到着早々、まず船着き場の桟橋にほど近いレストランで食事を済ませる。
まずは街の中を見て回ろうと美しい風景の中を散策していると、 小高い丘に行き着いた。
すると、先ほどのレストランで応対してくれた店員の女性も何用かやってきたらしく、 声をかけてくれた。
それが、最初の出会いだった。
「あら、お客さん」
「ん?・・・あ、ああ! さっきのレストランの! 奇遇だね。また会えるとは」
「そうですわね。 あ、またお店に来ていただければお会いできますよ・・・ あの、お伺いしてもよろしいですか?」
「なんだい?」
「見たところこの街の人ではないと思うのですけど・・・」
「ああ。首都の方から来たんだ。長めの休みを取って、 リフレッシュにね」
「ああ、そうだったんですね。あの、もしお嫌でなければ、 町をご案内しましょうか?」
「本当かい!?願ってもないよ! では、差し替えのない範囲で、案内をお願いしたい」
「ええ、喜んで」
「ああ、申し遅れた。私はシュルツ。シュルツ・ド・ヴァインヘーゲンと申します」
「エミリア・スフォルツァと申します」
「よろしく、エミリアさん」
「エミリーでいいですよ」
「では私のこともシュルツと呼んでくれ」
「はい、シュルツさん」
0コメント