【脚本冒頭公開】明日からを紡ぐ今日にある昨日までを
「っは!」
蒸し暑い朝だなぁ。
寝苦しくなっちゃったじゃん、もう。
まだ朝日も乏しい。
夢にまどろんでいるような時間に、気温に叩き起こされる不幸。
つまり、私は眠りが浅かったんだ。
携帯の時計をみると、時間はまだ五時を過ぎたところだった。
もう気温もそこそこ高くなっていてさらに机に突っ伏して寝落ちていた私は暑さと体の痛みでなんだかもうという感じだけど、こんなのは割と多くあることだ。
迫ってる次の日。
つまりは今日、月曜日なんだけれど。
その日に、私は大きい不安をひとつ抱えている。
先週の金曜に、担当編集から膨大なほどのダメ出しを頂戴した。
そのリカバリーはすでに始まっているんだけど、これが如何にもこうにもうまくいかない。
気分としては正直、ベッドに潜って冬眠したい。
春だけど。あ、もうほぼ夏か。
寝落ちて見た夢も最悪だ。
何が楽しくてあのつらい時間をプレイバックしてくれるのか。
おかげで寝汗もひどい。
よっぽど悪夢に感じたんだな、私。
気分転換に洗濯でもしようかな。
とか思いながら、それでも、この何もまともに生み出せない頭が憂鬱で仕方ない。
私は、失敗した自分をどう悔いて、どう次に向かっていいのか、この週末丸二日かけても見出せないでいる。
それくらいには要領が良くない。
わかっていたけど、自覚しているけど。
だから直そうとは思っているけれど、こういうことになると
そんな調整もできなくなる。
自己否定が先に来ちゃって、嫌になる。
その時間、あの日を、どう捉えたら私はそれを吸収して学習して前に進めるのか、ほとんどわからない。
これは由々しき事態であるのはわかるけれど、これを唯一相談できる相手からもらったNGで悩んでいるのだから、おいそれと相談するわけにもいかない。
だからって、無視するわけにもいかない。
それは、私がぶつかった壁で、
ハードルで、超えられるべき壁であるはずなんだって思いも同時にある。
だからこそ迷ってしまって、どこかにあるはずの突破口も見えないままだ。
目には見えないけど、暗い暗い、闇のような。透明な、暗闇。
それでも私は、思い立ったように椅子から立ち上がって、
頰を張った。
洗濯しよ。
瞑想の月曜日を経て、再びデスクで迎えた火曜日。
もう私は今回の企画は書けないんじゃないかと思って
一人で泣きじゃくった月曜の深夜を思い出してみると、後悔しかない。
目が腫れてる。とはいえ、今日も誰かと会う用事なんかないけど。
でも鏡は見るし、
買い物くらいには外に出る。
憂鬱だ。
周囲の人に、何かこそこそ話されてるんじゃないか。
フラれたのよきっと、とか言われるんじゃないか。
そんなわけあるか。
とか思っても、そういう自己中心的な疑心暗鬼に勝てない。
一縷の望みをかけて冷蔵庫の扉を開くけど、やっぱり食材は
ほとんど枯れてた。
ネット注文・・・うーん。いいやー。メガネかけてこう。
そんなことを考えてたら、携帯に着信が入る。
うわ。担当編集の黒川さんだ。
あーやばいやばいやばい。途端に冷や汗が出る。
じわーっとなんてもんじゃない。
一気にドッと、体の芯が冷えて、表面が熱くなる。
出たくない。
出たくない出たくない出たくない!
で、でも!
先週金曜から四日目にして何も送れてないから怒られる!
っあーどうしよう。とか、答えの決まりきった逡巡をしてしまっている間に、どうやら留守電に切り替わってしまったようだ。
はぁ。。。自分が嫌になる。だめなのは自分で、正しいのが黒川さんなのはわかってる。
それはもう正に、痛いくらいと言っていい。
臆病な私は、そんなことをわかっていても踏み出せない。
る、留守電聞くくらいなら。と思い立って携帯を手に取る。
留守番電話メッセージを呼び出して、
スピーカーを耳に当てる。
0コメント